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玉手箱を開けて老人になった浦島太郎が、独り浜辺を歩いていた。
父も母も妻も子も、自分を知る者はもう居ないのだ。
そう悲嘆して歩いていると、浜辺に座る若者を見付けた。
若者は海の向こうをぼんやりといつまでも眺めている。
浦島太郎は近づいて声をかけた。
「君、こんな所に長い間座って何を見ているのだね?」
「我が家の家訓で、ご先祖様の帰還を待っているのです」
「ご先祖様?それはどういう?」
「言い伝えでは、何やら動物と一緒に海の向こうに消えたそうで」
若者はそう言って恥ずかしそうに笑う。
「そんな事あるわけないですよね。でも家訓なので」
「お、おお……子孫よ。わしが、わしがその海に消えた先祖だ」
「おお!では、貴方が桃太郎様?」
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