怒られる

2/2
前へ
/200ページ
次へ
男が釣りをしに池に行くと、畔で少年が佇んでいるのを見付けた。 釣り竿を肩にかけ、じっと池の水を眺めている。 「どうかしたのかい?」 「このまま帰ったら、お父さんに怒られるかなって思って」 「何か悪戯でもしたのかな?」 「してないよ」 「じゃあ、一匹も釣れなかったとか?」 「そんな事ないよ」 それから男と少年は、釣りをしながら色々な事を話し合った。 学校の事、友達の事、そして恋の事。 男は少年時代を思い出し、懐かしく温かい気持ちになった。 そして2時間、3時間と経ち、空が赤みを帯びて来る。 「おっといけない。もう家に帰った方がいい」 「でも、お父さんに怒られないかな?」 「大丈夫。ちゃんと誠意をもって謝れば許してくれるよ」 「本当?」 少年の眼が輝く。 男が微笑み返した時、大きなクーラーボックスが目に入った。 「これ、かなり重そうだけど、君が持って来たの?」 「ううん。お父さんだよ」 「え?お父さんって、何処に居るの?」 「そう言えば、さっきから全然浮いて来ないや」
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加