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男が釣りをしに池に行くと、畔で少年が佇んでいるのを見付けた。
釣り竿を肩にかけ、じっと池の水を眺めている。
「どうかしたのかい?」
「このまま帰ったら、お父さんに怒られるかなって思って」
「何か悪戯でもしたのかな?」
「してないよ」
「じゃあ、一匹も釣れなかったとか?」
「そんな事ないよ」
それから男と少年は、釣りをしながら色々な事を話し合った。
学校の事、友達の事、そして恋の事。
男は少年時代を思い出し、懐かしく温かい気持ちになった。
そして2時間、3時間と経ち、空が赤みを帯びて来る。
「おっといけない。もう家に帰った方がいい」
「でも、お父さんに怒られないかな?」
「大丈夫。ちゃんと誠意をもって謝れば許してくれるよ」
「本当?」
少年の眼が輝く。
男が微笑み返した時、大きなクーラーボックスが目に入った。
「これ、かなり重そうだけど、君が持って来たの?」
「ううん。お父さんだよ」
「え?お父さんって、何処に居るの?」
「そう言えば、さっきから全然浮いて来ないや」
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