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「…え?健ちゃん、告白されたの?」
「うん。隣のクラスの水谷郁(みずたにかおる)さん。付き合うことになった」
「あれ?はるみの友達じゃん。もしかして、六人で遊んだ時がきっかけか~」
「巧もいいわよねー…どうせ私だけ彼女がいないのよ!」
透(とおる)の言葉を聞いて、二人は意味がわからないと言わんばかりの表情を見せる。
「透には、幼馴染の千草(ちぐさ)がいるじゃん」
「そうそう。付き合ってないのが不思議なくらい。透は千草ちゃんのこと好きなんだから、告っちゃえよ」
「ば、ばかねー!誰があんな凶暴女のことなんて」
「誰が、凶暴女だってぇ?」
背後から冷たい声が聞こえ、男三人はひぇっと思わず声を上げ、ゆっくりと後ろを振り返る。
手を組み、仁王立ちをして立つ同い年を見て、三人は固まってしまう。
「あんたたち、今誰のこと言ってたのかしらぁ?」
「あ、あらー?櫻子じゃない。どうしたのー?」
「うるさいわね、透。ちょっと江田くん。郁と付き合い始めたって本当?」
「櫻子、健ちゃんいい奴だから、大丈夫よ」
「透、うるさいっ!!…江田健太郎!」
「え?はい!」
櫻子は、いきなり健太郎の手を力強く握る。
「郁のことよろしくね。幸せにしてくれなきゃ、許さないから!」
嵐のように去っていく、櫻子を三人で見送る。
「千草ちゃんって、たまにすごいこと言ってくるよな…」
「俺もはるみと付き合い始めた時、同じようなこと言われたなぁ…」
「……友達思いなんでしょ」
教室の時計を確認して、透は二人に声をかける。
「ごめーん、二人とも。私、用事があるから行くわね」
「おう。また明日な」
「透、課題忘れんなよ」
「ありがとう。またねー」
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