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生徒玄関に行くと、先ほどのように仁王立ちする櫻子が透のことを待っていた。
「櫻子!お待たせ、行きましょう」
「……はぁ…なんで、一緒に行かないと行けないのかな…」
「櫻子のパパに頼まれているからね。定検のときは病院までよろしくって」
「…心配しすぎなのよ」
「まあまあ!…でも、いろいろ文句言っても、結局待っていてくれる櫻子が好きだわ」
「聞き飽きた」
病院までの落ち葉道を並んで歩いていると、懐かしい桜の樹が見えてくる。
「あら、もうほとんど葉がついてないわね」
「今年は風が強いから、早く葉が落ちてるんでしょ」
「春に花が咲いたら、また一緒に見に来ましょうね!」
「はいはい、それももう聞き飽きた」
そう言って、先を歩いて行ってしまう櫻子の背中を見ながら、透は昔の約束をふと思い出し、少し切ない表情を出してしまう。が、すぐに、表情を笑顔に戻すと、櫻子を追いかけて走り出す。
ロビーで本を読んで待っていると、定期検診が終わった櫻子が透のそばに寄って来た。
「お待たせ、帰ろう」
そう言って自分の荷物を透の膝に置く。
「…うっ…相変わらず重いわね…」
「だって、定検が終わったときのごほうびじゃん」
「分かってるわよ。荷物を持ちますわ、お嬢様」
「バーカ」
病院に来たときと同じ道を戻って行く。何か考えているのか、櫻子はいつものようにおしゃべりすることはなく、どんどん歩いていってしまう。
すると、あの桜の樹のところで、ふと、その足が止まる。櫻子は桜の樹の幹をそっと手でなでる。
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