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タバコの煙を吐いて、それが宙に消えていくのを見ていた。
ただのお節介だけならどれだけ良かっただろう。いつもの世話焼きな性分だけなら。
いつからこんなに自分の中に千鶴が入り込んでいたのか。
屈託なく笑う千鶴に惹かれていた。
仕事で酷い目に合っているのに、曇りのないその子供みたいな笑顔に。
たまに見せる仕事モードの表情に、哀しくなってどうにかしてやりたいと思うようになった。
実際は何も出来ないでいるのに。
電話を終えて居間に戻って来た千鶴は何も無かったかのような顔で笑う。
さっきまで見てたくだらないバラエティ番組の続きを俺の隣に座って、また見始める。
「明日から仕事行くね」
テレビに視線を向けたまま、何でもない事みたいに告げる。
穏やかな毎日は終わる。永遠には続かない。
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