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「……痛くすんなよ」 「冷やせば大丈夫」 冷蔵庫から千鶴が氷を持ってきて俺の耳を冷やす。ぽたぽたと氷が溶けて千鶴の指から雫を落としていく。 今までもこのくらいの距離でいた事は何度もあったのに、何故か今は妙に緊張した。 ピアスの穴を開けられるのに怯えてるのとはまた違う。 千鶴に対してそういう目で見ている自分がいた。 「そろそろいいかな」 まだ少し欠片が残った氷をテーブルの上に置いて、ピアッサーを手にする。 俺の耳にそれを宛てがうけれど、冷やしたお陰であまり感覚がない。 「じゃあ、開けるね」 「おう」 直ぐ近くにいる千鶴を横目で見ると、目が合った。千鶴は、ふっと優しく微笑みを返してくる。 まるで何かの儀式のように、ガシャンと音を立てて一気に耳たぶを貫かれる。 冷やしても微妙に痛みが走って身体に力が入った。
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