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「オレの事、抱ける?」 消え入りそうな声で聞いてきた千鶴に触れていた手を止めた。 そのつもりでこの部屋に移動したし、同性同士という嫌悪感は不思議とない。 千鶴がどこか中性的な容姿なのもあるけれど、それ以上に俺が千鶴に好意を抱いてるから。 いつから、とかはよく分からない。 ただ、千鶴との暮らしの中でそれはゆっくり育っていった。 そんな時に千鶴から好きだと言われて、ちゃんと意識するようになった。 「オレがこれからも自分を商売道具にしても、変わらない?」 なんて言えばいいかわからない。 千鶴がどんな答えを求めているのかも、どれが正しいのかも。 小説家失格だな。 大事な時に言葉が出ないだなんて。 どんな言葉も正解とは思えないなんて。 「千鶴」 与えられる言葉は何もない。 だから言葉の代わりに千鶴を抱きしめた。
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