想い出の未来へ

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16年前。 交通事故が原因で二人の仲のよい夫婦が亡くなったのは、新年早々のことだった。 夫の趣味が高じて始めた写真館の仕事を手伝う妻が押していたベビーカーは奇跡的に無傷で、若い夫婦が命を懸けて守った、一歳を迎えたばかりの女の子は、すぐに父の友人夫婦に引き取られて……… 「お兄ちゃん?明日もふざけるようなら佐久間さんに言いつけるから!知らないよ?お給料減っちゃうよ!」 「おまっ……何でサクの連絡先知ってんの?!」 「んふふ~ヒミツ」 「つか、サクに給料もらってるんじゃねぇし!公務員なんだから」 「あはははっ」 こうしてちゃんと生きている。 自分の本当の両親が事故で亡くなっていることも、家族と思っている人間とは血が繋がっていないことも知らされることなく、今日の今日まで、しっかりと生きていて。 そしてまた新しい年を迎え、ごく普通に暮らしていくはずだったんだよ… 俺のそばで…さ。 「お兄ちゃん?」 2本目の缶に手をつける頃、真里は姿勢を崩し仏壇の前でアルバムを開いていた。 「ん?」 「式はやった方がいいと思う?」 「ニノミヤさんは何て言ってんだ?」 「面倒だからしたくない……って」 「あはは」 「私は…ライスシャワーとかブーケトスとかしたいかも」 「結婚式のイメージってそれかよ!」 たぶんそれは、うちに“呼ぶ親戚”も“花束を渡す親”もいないからニノミヤさんなりに気を遣っての発言なんだろう。 いいヤツなのかもな。
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