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「写真だけでも撮ろうかな」
「そのくらいなら話してみたら?」
「うん」
「なんだ?物足りないのか?」
「ううん…違う…」
テーブルの上の缶ビールを持ち上げると、いつのまにか全部飲み干していたらしく、中身を確認しようと左右に軽く振るとピチャピチャ…と滑稽な音がした。
そんな音に混ざって、
「こんな風に笑えるのかなって……思って………」
小さく吐き出した真里の言葉に、心臓をぎゅっと締め付けられた。
子供っぽく言えば、結婚とは、好きで好きでしょうがなくて離れたくないという男女が交わす永遠の誓い。
その気持ちが顔に出るのであれば、それは自然と笑顔なんだと思っていた。
真里もてっきりニノミヤという男にそういう感情を抱き、想い合い、結婚の話になって。
そして明日その挨拶にニノミヤさんがここに来るんだろう?
それなのに何で泣きそうなんだよ。
「ニノミヤさんじゃ不安なことでもあるのか?」
残った少しのビールを口に入れ、
「例えば借金があるとか、酒癖悪いとか?寝相が悪いとか?あ…俺か」
立て続けに質問を投げかけた。
心を閉ざしそうになっていた真里に、冗談交じりにして聞いてみても、声を出さずただ首を横に振るだけだった。
「ニノミヤさんはお前のこと好きじゃないとか?」
「それはない……と思う」
「じゃ、お前が彼のこと好きじゃないのか?」
「………」
「惚れられてんだろ?だったら幸せにしてくれるよ…だろ?」
「お兄ちゃんは?」
「え?」
「お兄ちゃんはそれで幸せ?」
「………」
「ごめん。お風呂入ってくる」
バカだなぁ真里。
俺はそれで幸せなのかって?
そんなわかりきってること聞くんじゃねぇよ。
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