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翌日の11時。
はじめまして…とやって来たニノミヤという男はどこか飄々としていて人や物に興味もなく執着もしないような人間に見えた。
ただそれは、内に秘めた熱い部分を見られたくない彼が造り出した彼なりの壁だとわかると、冷たい素振りも口調もどれもが可愛らしく思えた。
“撫でて!わーい!散歩!”というような犬タイプではなく、
“撫でたいの?ならいいですけど、出来ればオデコのとこか尻尾のつけね辺りにしてもらえます?へぇ…上手じゃないですか…にゃーゴロゴロ…”という猫っぽい印象があった。
結婚は6月の中旬に決めたそうだ。
「その日オレの誕生日なんすよ。ほら、結婚記念日が誕生日なら忘れなくて済むし、お祝いも1回省けるしラクかなって思って」
合理的なのか単に面倒臭がりなのかわからないけど、真里を見ると昨夜の暗い表情は無くなっていたから、まぁこれでいいんだろう。
その日は、朝からニノミヤさんの部屋に真里の荷物を運び入れ、二人で婚姻届を提出し、夜にニノミヤの両親と俺を交えての5人での食事会をする…という段取りになった。
あらかた挨拶やら食事会の場所やらが決まると、
「はー緊張して疲れたー!真里ー!オレやっぱ泊まってくー。ビールあるー?いいですよね?お兄さんも飲みますよね?」
色々と突っ込みたいけど真里の手前そうもいかずに、
「俺買ってくるわ」
ちょっと二人きりにしてやろうかと立ち上がると、
「あー、いいっすよ、真里に買いに行かせますから。真里、オレね、ハンバーグ!じゃ、よろしくー!」
はぁー!と、我が物顔でソファーではなくラグに横になる男に、ここは誰の家だ?と若干イラついた。
下手したらそのまま寝てしまいそうだ。
どうにか真里が戻るまでにもう少し打ち解けておけたらと思い、声をかけた。
「ニノミヤさん」
「はーい」
「妹もニノミヤになるからさ、俺はトモユキくんって呼んでも…」
「ダメです」
「えっ?あ、じゃ、あだ名とか?」
「それもないです」
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