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俺、間違ってんのか?
こういう関係性は初めてだからわかんねぇよ。
無言の状態がしばらく続き、何か言わないとと息を吸い込んだ時、ニノミヤさんが“根岸さん”と呼び、起き上がってあぐらをかいた。
「真里はオレの嫁になるんですよ。二宮家に嫁ぐの。根岸家とは関係なくなる訳ですよ。言ってる意味わかります?」
人懐っこいと思っていた茶色い目で真っ直ぐ俺を見て、
「あぁ…根岸家と、じゃなくて、篠崎家と…って言えばいいかな?」
口元だけを緩ませた。
写真館の名前を口にした男の姿が一瞬グラリと揺れた。
真里にずっと隠してきた名字。
真里が根岸家に養子に入る前の名前…。
「要するに、あなたとは全くの他人ですからね。そんな人にですよ、下の名前やあだ名で呼ばれんのはまっぴらごめんってこと」
この男は…
どこまで知っているんだ?
「それに……嫁…ま、今はまだ彼女ですけど?アイツの前では“お兄さん”って呼びますけどね、嫌われたくないんで。でも、親しげに呼ばれたくないですよね、ホント、あなたにだけは……」
「な……んで…」
「当たり前じゃないですかー、だってあなたはオレのライバルですから?」
急いで買い物してきたのか、息を切らして帰って来た真里を追うようにニノミヤもキッチンへと行き、わざとらしく、見せつけるように腰に手をまわし、俺を挑発的な目で見て、勝ち誇ったように口角を上げた。
俺は、タイミングよくかかってきたサクからの電話を仕事だと偽って、いちゃつく二人を家に残し、サクが待つアパートへ転がり込んだ。
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