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苦痛な時間も過ぎ去り夕暮れが教室を染める。
部活に勤しむ人ややどこか寄り道をするかと賑わう生徒を横目に足早に教室を出る。
何度も時計を確認したり、鞄を持ち直したりして自分でも落ち着きがないのが分かる。
先に教室を出たはずだ、と考える間もなく冷たい風を切る速度は早くなっていく、それと比例するように心臓も高鳴る。
校門を出て、人通りがなくなるまで無意識に走っていた。
十分ぐらい走った家の近くの小さな公園に着く頃には切れる息が白く染まる。
暗くなり始めのこの時間は誰も居なくなって静まり返っている。
いつもの待ち合わせの場所。私達だけの小さな世界。
薄暗くなっていく景色に影を見つけ、手を振る。さっきまで一緒の教室に居たはずなのに、久しぶりに逢った気になる。
「おまたせっ」絶え絶えの息を整えながらゆっくりと近づいて行くと影も私を方へと歩を進める。
鼻の先が赤らんでいるのを見て、挨拶も適当に真っ先に教室を出た後ろ姿を思い出す。
「遅かったじゃない」そう言いながらメガネを直す。
「ごめんね」とその人、委員長に抱きつく。
冬なのも忘れるぐらい身体がポカポカと火照る。
顔を赤らめるのが可愛くてつい力が入ってしまう。
「抱きつくな」と力なく押してくるから渋々と離れる。
「可愛いし、暖かいのに」とわざと膨れ面をする。
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