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ふいにしたのが式だけだったならまだしも、学部最初の説明会も授業一回目の出席もできなかった。
自由選択の科目はどれも初出席が二回目の授業からになってしまい悩む猶予もなかったし、すでに周囲は微妙に友人関係ができちゃっているし……
こうして私は入学式で首席の出で立ちを拝むこともなければ、親しい人もおらず噂すら耳に入ってこなかったのだ。
でも、もう私も大学生だ。
友達といつでも仲良しこよししなくてはやっていけないわけでもないし、私はここに勉強をしにきたんだから!
そう自分に言い聞かせないと、鼻の奥がつんと熱くなってしまいそうな通学二週目の金曜日だった。
広いキャンパスの桜並木道を駅に向かう無数の学生に紛れ、一人でもピンと背筋を伸ばし颯爽と歩いた。
ふいに前方を行く人たちがチラチラと左の方を見ているのに気づき、つられて私もそちらに目をやった。
目に入ってきた光景。
脇道を五メートルほど行った先のベンチに一人の男性が座っていた。
散り始めの桜が彼の周りにたくさん舞い、男性のうすべに色の髪の毛と溶けていくようで、それはとても幻想的に映った。
普段なら奇抜だと感じるはずのその髪色が、その風景ととてもよくマッチして見えた。
泣いている……?
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