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3
「あ、このチョコ、ブランデー入りじゃん。きっと高いよね」
詩子はブランデーをチュウチュウ吸い出した後、チョコをペロペロ舐めた。
1ダースもあったチョコレートは、あっと言う間に胃袋に収まった。
「今日はラッキーだわ」
盗んだ甲斐があった。
4
「え?睦美さんのチョコって、ブランデーが入ってるやつだったんですか?」
「ブタコが2つとも一人で食べたとしたら...まずいんじゃない?確か、酒飲みながらドリアン食べたら、中毒起こすって聞いたよ。地獄の苦しみだって」
「...残念ながら、それ迷信らしいですよ」
「残念って、あんたw」
5
チョコを食べ終え、寝そべりながらテレビを見ていた詩子は、胃のあたりに違和感を覚えた。
「あれ?どうしたのかな」
6
「そっかー、残念。あいつが犯人だったら、これで天罰当たってたかもしれないのにね」
「...いや、睦美さん。今頃、当たってるかもしれませんよ」
「なんで?ドリアンは関係ないんでしょ」
「そっちじゃなくて、キノコのほうです。うちの家庭菜園に生えたヒトヨタケを使ったんですよ」
「なに、その不気味な名前のキノコ。毒なの?」
「まさか。睦美さんに毒キノコなんて渡しませんよ。普通に食べられますよ。珍味です。酒と一緒でなければ」
「どういう意味?」
「アセトアルデヒド分解酵素の働きが抑制されるので、アルコールから炭酸ガスへの代謝が起きなくなって...」
「ごめん、よく分からん。要するに、何よ?」
「つまり悪酔いして、いつまで経っても醒めないんです。ヒトヨタケに入ってる、コプリンとアンタブスっていう成分のせいで」
「ちょ、アンタブスって。ブタコにピッタリじゃないの」
「どうしましょうか?」
「うーん。いいや、ほっとこう。ブタコが盗んだっていう証拠は無いんだしねー」
7
吐き気がする。
部屋がぐるぐる回っている。
堪らず、その場で吐いてしまった。
胃の中が空になるまで吐き続けたが、苦しさは収まらない。
呼吸も苦しくなってきた。
毒を盛られた?このまま死ぬのかな...
そのまま、詩子の意識が遠のいた。
完
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