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「今、戻りましたー。あれ?凛子、残業?」
「あ、睦美さん。本社での打ち合わせ、終わったんですか?」
「うん。すっかり遅くなったねー。報告書まとめたら、とっとと帰るから。あんたも、適当に切り上げて帰んなさいよ」
「分かってますって。あ、そうだ。チョコ作って来たんですよ。いつもお世話になってるから、ほんのお礼に差し上げます。バレンタインだし」
「あははー。友チョコかい。悪いね。今度、何かお返しするよ...。ん、どうした?」
「...無いんです、チョコが。確かにロッカーに置いといたのに。どうしたんだろう」
「あんた、それって...。ブタコの仕業じゃないの?」
「ブタコって、詩子さんの事ですか?まさか...でも...」
「知らないの?あいつ、手癖が悪いんだよ。あんたが配属される前の事だけど、色んな物がしょっちゅう無くなるんで、ちょっと問題になったんだけどね。
そん時の課長がさ、証拠も無いのに他人を疑っちゃあいかん!なんて言ってさ。結局、うやむやになっちゃった。
でもね、みんな薄々、勘付いてるよ。ブタコの仕業だって。でもあいつ、なかなか尻尾を出さないんだよねぇ」
「....」
「あーあ。証拠さえ掴めば、ギャフンと言わせてやれるんだけどねえ。あんたも災難だったね。せっかく作ってくれたのに」
「いえ...また作って持ってきますよ。でも、今回のは自信作だったんだけどなあ」
「そうなんだ?どんなの作ったの?」
「2種類作ったんですよ。ドリアンとキノコが入ってるの」
「ちょ...。それ、ウケ狙い?」
「いやいや、美味しんですって!ドリアンは臭いけど、味が良いんですよ。チョコでコーティングしたら、匂いが気にならなくなるんです。
キノコだって、こないだテレビでシイタケの入ったチョコレートが紹介されてたんで、試しに作ってみたら、美味しかったんです」
「あはは。じゃあ、次回に期待してるよ。よし、報告書完成っと。さて、帰ろうか。ん?...やられた!」
「どうしたんですか?」
「どうしたも、こうしたも、ブタコの奴にやられたよ。ウチの旦那にやろうと思ってチョコレート買って、ロッカーに置いといたんだけど。無いわ」
「えー」
「誰か、あのブタに天罰与えてやってくれないかな...」
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