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チョコレート天国
1
帰宅した詩子は、でっぷりと肥った体を椅子に載せると、バッグからチョコレートを取り出した。
綺麗にラッピングされたチョコレート。
ビリビリと包装紙を破いて蓋を開けると、中には手作りチョコが並んでいた。
「ふーん、生意気ねぇ。見た目は悪くないけど」
適当にひとつ、太い指で掴み、ガブリと噛り付く。
「...中身はフルーツか。味はまあまあね」
くちゃくちゃ噛みながら、戦利品を評価する。
ついさっき、職場の後輩、凛子のロッカーから盗んできたチョコレートだ。
「凛子のやつ、バレンタインだからって、どんな男に媚びようとしてたんだ?ちょっと若くて人気あるからって、あんな鶏ガラみたいなガリガリ女...」
指先をペロペロ舐めると、2個目のチョコに手を伸ばした。
詩子には、盗癖がある。職場の備品や同僚の私物を度々盗む。時には、財布の中から現金も失敬する。
バレてない。と、詩子は思っている。
これからもバレない。そう信じている。
「なんだこれ?変わった味...。
中に入ってるのは、キノコかな?こんなものチョコに入れるなんて、凛子ってバカなのかな?
でも、意外とチョコに合うかも」
そういえば、どこかの店の新作で、シイタケの入ったチョコレートが好評だと、何日か前のテレビ番組で見たのを思い出した。
あれにヒントを得たのかな。
流行り物にすぐ飛びついて真似るなんて、どれだけ凛子は軽薄なんだろう。
詩子は全部のチョコをたいらげると、バッグからもうひとつチョコレートの包みを取り出した。
これも職場の同僚、睦美のロッカーから盗んだものだった。
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