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だが次の瞬間、豚人間たちは亮に襲いかかった。奇怪な声を上げながら亮を捕まえ、皆で高々と持ち上げる。
捕まえられた亮は悲鳴を上げながら、あらんかぎりの力でもがく。だが豚人間の腕力は、自分のそれとは比較にならない――
「お前ら、さっさと失せろニャ」
いきなり聞こえてきた奇妙な声。同時に豚人間たちの力が緩み、亮はどさりと地面に落ちた。彼は慌てて立ち上がり、何事が起きたのか確認すべく周囲を見回す。
そこにいたのは、一人の女だった。
「ここは、オークの来る場所じゃないニャ。さっさと消えろと言ってるニャ」
女はそう言いながら、豚人間たちを見回す。二十歳から二十五歳くらいだろうか。髪は黒く、肌は白い。綺麗ではあるが、どこか野性味を感じさせる顔立ちだ。背は高く、しなやかな体つきをしている。
そして、女の頭には三角の何かが二つ生えている。まるど猫の耳のようだ。さらに、尻には尻尾も生えていた。
唖然とした表情で、女を見つめる亮。だが、豚人間たちの反応は違っていた。女に向かい、耳障りな声でギャアギャア吠える。引き下がるつもりはないらしい。
すると、女は面倒くさそうなため息を洩らした。
「じゃあ全員、死んでもらうニャ」
次の瞬間、女が動く。
何をしたのか、亮にははっきりと見えなかった。それくらい女の動きは早く、しなやかなものだったのだ。女は滑らかに動き、そして腕を振る。直後に手近な位置にいた豚人間が、喉から血を吹き上げて倒れていった。
女は振り返りもせず、次の相手へと向かっていく。他の者たちは、何が起きたのか把握できないまま硬直している。
だが、女は容赦しなかった。豚人間に襲いかかっていく――
女が豚人間たち全員を死体に変えるまで、一分ほどしかかからなかった。その間、亮は呆然としていた。恐怖を通り越し、放心状態に陥っていたのだ。
だが女の言葉が、亮を現実へと引き戻す。
「久しぶりだニャ、亮」
その言葉を聞き、亮は顔を上げる。女は優しげな笑みを浮かべ、じっとこちらを見下ろしていた。亮はぽかんとした顔のまま、女の顔を見つめる。
すると、女は呆れたような表情を浮かべる。
「お前は、相変わらずヘタレだニャ。いくつになっても世話の焼ける小僧だニャ」
「だ、誰?」
亮は、そんな言葉を返すのがやっとだった。目の前の猫耳の女に、全く見覚えはない。
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