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確かに走っていた。ローゼリアの意向で。今のところ危険はないが、精神的プレッシャーは半端ない。
「……この街は、人が多いね」
「確かになぁ。これくらいなら、走り抜けるのは楽しいぜ」
いつものメンバーがいれば、バカにされただろう。
「みたいだね。俺を迷いなく追い掛けてくる姿は、大したものだったよ。隠れる気がないのを除けばね」
そう、人混みだからと、脇目も降らず追い掛けた。バレたのは仕方ない。視界に捉えていたのに、いきなり背後からあらわれたギール。ただ者ではないのは間違いないだろう。警戒は怠らない。
「走るのが役目だからな。人混みに紛れきれてなかったのは、俺の落ち度だってことは認めるさ」
そうこうしているうちに、ギルドに到着する。白雪姫のことだ、赤ずきんを連れてさっさと戻るだろう。それは、アリスでもわかる。
「ただいまー!」
両扉を開けると、白雪姫と赤ずきんはいる。しかし、ラプンツェルとルクレツィアの間にカノンがいた。向こうには、気だるげな帽子屋と相変わらずの3月ウサギがいる。
「……勢揃いだな、おい」
「あら、早かったわね」
「あ!アリスくんの後ろの人!」
━━ギイ……………
両扉をゆっくり開けて入ってくる人に、見えていない瞳を向ける。あのとき感じたものをまた感じた。
「やぁ」
爽やかに微笑むイケメン版ローゼリアがそこにいた。
「「白雪姫にソックリ……」」
ラプンツェルとルクレツィアがハモる。
「あの顔、もう1つあるのかよ……。鏡じゃねぇだろうな?」
舌打ちしながら、帽子屋が手鏡に瞳を逸らす。
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