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━━平和な日常が帰ってきた━━
もう人目を気にしたりしなくていい。この街は、すべてを受け入れてくれる。信じていいのだという思い、信じてもらえる心地好さを手放したくないという思い。
この街で生きていこう。この温かさに応え続けよう。言葉にはしないけれど、確実に二人の中で、その思いは芽生えていた。
「ん~、いい天気ねぇ~。清々しい空気だわ」
性格は相変わらずだけれど、角がとれたローゼリア。
「うん、青空が眩しいよ」
真の瞳の力を解放し、人目を気にせず、笑顔を見せられるようになったリーゼロッテ。
二人の気持ちはスッキリしていた。一抹の不安はあったけれど。
ローゼリアはふと、不思議な感覚に立ち止まる。
「ちょ、ちょっと!ローゼ!今の人!ローゼにそっくりだった!」
振り返る。見えるはずがないが、振り返らずにはいられなかった。
「……あたしと間違えたりして、ついていかないでちょうだい?」
いつものように言うけれど、見えない瞳で探してしまう。
「似てるって言っても、ローゼをそのまま大きくして、男性にした感じ」
冗談は通じていない。真面目に返された。
「……男性?」
怪訝な顔をする。脳裏に過るは、忘れかけていたカノンの言葉。
━━あなたさまは純粋な死喰腐鬼(グール)ではないんですのよ?━━
心の奥で引っ掛かっていた。どう純粋でないのかと。
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