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「いやいやいや、そいつは俺と変わらないくらいで、将来はえらい美女にはなりそうかな」
悔しいがあの時点で、美少女というより、美人だ。そこは認めざる得ない。
「ふぅん、成長途上なんだ。愉しみだね」
口調やその他諸々が、性別を変えただけで同じ。顔も同じ。顔だけなら、世界に三人は、いるという。しかし、性格まで同じっているだろうか。これはあれじゃないか?似ているんじゃない、棄てられたローゼリアにこんな兄 がいても何ら驚かない。じゃあ、こいつは死喰腐鬼(グール)?ローゼリアでまったくわからなかったのだ。キレイ過ぎるが故に。アリスには、人間にしか見えない。おバカの極論。
「……居場所突き止めろだけだったけど、いづれ会うなら早い方がいいか。俺はアリス。あんたは?」
「確かにアリスの格好だね。俺?俺は『ギール』。『さがしもの』があって、この街に来た。で、彼女の名前は?」
「『さがしもの』?そいや、見掛けないもんな。見たら絶対忘れられない顔だし。そいつは、『白雪姫ローゼリア』だよ」
未だに同じ顔が男であることに、更なる身震いをするアリス。
「ちょっと……ね。『白雪姫ローゼリア』か。最高だね。何?俺とソックリなその娘が好きなの?」
………全身の毛穴が開く音が幻聴のように聞こえた。身内じゃなかったら、嫌だ!身内でも嫌だ!ダブルで殺される!
「ち、違う!毎回、生命の危機感じてるから!」
ぶるぶる首を振る。最近は柔らかくなったが、簡略化されただけかもしれない。未だ、生命の危機は去っていない。わかっている、赤ずきんを諦めない限り、平行線だ。だが、諦めるつもりはない。
「まぁ、いいや。案内してよ。アリスくん」
余裕の表情でアリスを促す。
「ああ、一個忘れてた。白雪姫は盲目だぜ。その代わり……バランス感覚半端ないけどな」
先導するアリス。その言葉に返答はない。ついてくる足音に変化はない。増えることもない。何か合ったなら、走り去ればいい。たぶん、全力ならば逃げきれる。
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