プロローグ

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……危篤状態だった心結が目を開くと、三年の月日が経っていた。何も知らない心結。心拍数が安定していたため、自宅療養にきり変わった次の日。ショックの余り、卒業式当日の記憶を無くしていた。……だから、彼女は気分がいいと掛けたままの制服に袖を通し、学校へ向かった。 「あ!心結?!ちょっと……!?」 母の声がしたが、そのまま駆け出していた。 ……そんな彼女を待っていたのは、女子高から共学に切り替わり、制服の変わった母校だった。 学校自体は全く同じなのに……。 「……え?」 訳がわからず、立ち尽くす心結。 「ねぇ、あの子。超可愛い……けど、何で女子高だったときの制服着てるの?」 「卒業生?にしては若いけど」 「あの子可愛いんだけど、ナンパしねぇ?どこ高だろ?」 周りから奇異の目で見られていた。現実を受け止め切れず、心結は駆け出した。 ……数日後、病院で更なる残酷な現実を告げられた。 「……心結ちゃん、誠に申し訳ないが、現在の医療では君を完治させられない。それと……、保って3年の命だ」 告げられたことに母は泣き崩れた。長年診てくれていた先生も辛そうだ。 「……どうしたい?その2、3年の間に医学が進歩してくれることを願うが、気休めは言いたくないからな」 心結はわかっていた。彼も本気で病気に向き合ってくれていたことに。その上で、無力だと感じて自らを責めていることも。医者として、一人の人間として向き合ってくれていたから。 「……三年、ううん、二年でいい。あの学校に通って……、卒業式に出たいです。思い出がほしいから」
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