2054人が本棚に入れています
本棚に追加
………私はぎゅっと唇を噛みしめる。
噛みしめすぎてちょっと痛いくらいだけど、そのほうがいい。
じゃないと、また簡単に涙が流れてしまいそうになる。
「どんな意味があるのかは、私にはわからないけど……。きっと大事な意味があるんだよね?」
切なく歪む私の顔を見て紗羽はポンポン、と背中を叩くと、いつもの笑顔で笑ってくれる。
「羽村さん、6年前と同じことを言うつもりで、香音にそれを渡しに来たんじゃないのかな?それで、……たまたま桐生さんとのこと見ちゃって、……まぁ嫉妬だよね。だから、そんな行動に出ちゃったんだと思うんだけど……」
紗羽は、ふぅ…と息を吐くと「これはあくまで私の想像だけどね」と、眉を下げる。
「羽村さんの気持ちは羽村さんにしかわからないし、香音が知りたいなら、ちゃんと話をした方がいいと思うよ」
紗羽の言うことは正しい。
逃げてばかりじゃ、何もわからないままだ。
私は一瞬躊躇いながらも、小さくコク、と頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!