それぞれの想いが向かう先

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………私はぎゅっと唇を噛みしめる。 噛みしめすぎてちょっと痛いくらいだけど、そのほうがいい。 じゃないと、また簡単に涙が流れてしまいそうになる。 「どんな意味があるのかは、私にはわからないけど……。きっと大事な意味があるんだよね?」 切なく歪む私の顔を見て紗羽はポンポン、と背中を叩くと、いつもの笑顔で笑ってくれる。 「羽村さん、6年前と同じことを言うつもりで、香音にそれを渡しに来たんじゃないのかな?それで、……たまたま桐生さんとのこと見ちゃって、……まぁ嫉妬だよね。だから、そんな行動に出ちゃったんだと思うんだけど……」 紗羽は、ふぅ…と息を吐くと「これはあくまで私の想像だけどね」と、眉を下げる。 「羽村さんの気持ちは羽村さんにしかわからないし、香音が知りたいなら、ちゃんと話をした方がいいと思うよ」 紗羽の言うことは正しい。 逃げてばかりじゃ、何もわからないままだ。 私は一瞬躊躇いながらも、小さくコク、と頷いた。
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