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「きーたーみーちゃん!今日こそ、一緒に帰ろうぜー」
「帰りません」
事務所でタイムカードを押し、机に向かって引継ぎファイルにペンを走らせていると、私の隣にあるパイプ椅子を引いて、和田さんが座る。
「また?一体、いつんなったら俺と一緒に帰ってくれんの?」
「ずっとないです」
彼、和田さんが働き始めて半年が過ぎた。
意外と真面目な和田さんは仕事を覚えるのも早く、壱吾がいなくなった穴を上手く埋めてくれている。
思っていたより接客に向いているのか、中には彼目当てのお客様もいるくらいだ。
「ハハ、和田くんも諦めないねー」
割って入るように津坂さんがシフト表を手にやってくると、和田さんは津坂さんに向かって、ヘラっと笑う。
「全然、相手にしてもらえないんすけどねー」
「そりゃ北見さんには、大好きな彼氏がいるからね」
「そっすねー。顔だけなら俺も負けてないはずなんすけど」
ーーーあれは、和田さんが働き始めてニヶ月が経った頃。
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