〈過去〉19歳・初夏

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「壱吾!」 裏口を出たところで、タイミングよく向こうから歩いてきた壱吾に手を振ると、私は勢いよく壱吾の胸に飛び込む。 「っと、お疲れ。なに、珍しいね」 「だって久し振りじゃん……」 ぎゅうっと腰に腕を巻きつけ、壱吾の胸にグリグリとおでこを押し付ければ、壱吾の匂いにどこかホッとする。 「ん、寂しかった?」 「………寂しかった」 私の頭の上で、壱吾がふっと笑う気配がする。 昔の私と比べると、ずいぶん素直になったことからくるものだろう。 そのままぎゅっと抱きしめ返されると「俺も」と、耳元で囁いた。
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