〈過去〉19歳・初夏

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「あ、これ新曲かな」 ズイ、と身体を前のめりにさせ、数十秒のCMを食い入るように観ていると、壱吾が少し身体を伸ばし、目の前のテーブルにグラスを置いた。 「香音」 「ん?」 CMが終わり、隣の壱吾へ顔を向ける。 「ちょっと、俺の前に立って」 「前?…なんで?」 「いいから」 私は同じようにテーブルにグラスを置くと、言われたように壱吾の前へ立つ。 ベッドに座ったままの壱吾を見下ろす形になると、壱吾の腕が私の腰に回り、クイと引き寄せられる。 「い、壱吾?」 「充電さして」 さっきの私と反対で、今度は壱吾が私の胸の辺りに顔を埋める。 なんだか甘えられているような気分になり、私は壱吾の髪をサラ…と撫でた。
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