〈過去〉19歳・初夏

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今まで何度となくキスを交わしてきたのに、押し当てた唇から緊張が伝わってしまいそうで。 私はすぐに唇を離すと、不満気な瞳が私を見上げる。 「………これだけ?」 「キ……キスはキスでしょ!」 「全然足んない」 腰に回された片方の手が後頭部に回ると、グイと引き寄せるようにして深く唇が合わさる。 ヨロ…と足元がふらつき、ベッドの端に両膝をつくと、そのまま壱吾を押し倒すような形でベッドに倒れ込んだ。 差し込まれた舌が口の中を掻き回し、色のついた吐息が零れ出す。 息が上がり、キュ、と壱吾のシャツを掴むと、そっと離れる唇が惜しむように、もう一度チュ、と音を鳴らしながら触れた。 「……これくらいしてよ」 「っ、」 頬をピンク色に染める私を、とても意地悪な顔で壱吾が見上げた。
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