〈過去〉19歳・初夏

12/78
前へ
/747ページ
次へ
馬乗りの状態のまま見つめ合うと、壱吾の唇が動く。 「就活、どう?」 「………それ、この体勢で話すこと?」 私としては、すぐにでも壱吾の上から離れたい。 なのに、がっしりと腕でホールドされて身動きすら出来ずにいる。 「こんな機会、なかなかないし」 「やだ。恥ずかしいから離して」 壱吾としばし無言の睨み合いが続く。 ふっと小さく息を吐く音が聴こえたと同時に、ぐるりと身体が反転された。 背中に柔らかな感触が触れると、私の顔の横に手をつき、見下ろす壱吾の姿。 「これなら、いつもやってることだから恥ずかしくねーよな?」 少し目を見開いて固まる私に、 「さぁ、ナニしよっか?」 楽しそうな笑みを浮かべ、私の反応を伺うように、スル、と大きな手のひらが太腿を撫でた。
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2053人が本棚に入れています
本棚に追加