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少し引き攣ったような顔に、思わずクスクスと笑いが零れる。
私は徐ろに遠目に見えるワゴンを指差すと、
「ね!せっかくだから、アレつけよっ」
「は?ちょ、それまじ勘弁……」
「いーじゃん!みんなつけてる!」
嫌がる壱吾の手を引いてワゴンに近付くと、元気なお姉さんがにこやかに手を振ってくれる。
真剣な顔で耳付きカチューシャを選ぶ私を、壱吾は優しい眼差しで眺めていた。
「壱吾もつければいいのにー」
「……お前、それ本気で言ってんの?」
結局つけたのは私だけで、目的のアトラクションを目指してパーク内を歩く。
見える景色はあの時とさほど変わっていないのに、私達の距離だけはあの時と違う。
こんな風に寄り添い、手を繋いで歩くことが出来るなんて思ってもいなかった。
「お揃い、可愛いのになー」
「可愛いのは、お前一人で充分」
私が喜ぶ言葉をサラっと言ってのけると、目的のアトラクションの前に到着する。
なかなかの待ち時間だけど、それすらも楽しくて仕方ない。
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