〈過去〉19歳・初夏

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少し引き攣ったような顔に、思わずクスクスと笑いが零れる。 私は徐ろに遠目に見えるワゴンを指差すと、 「ね!せっかくだから、アレつけよっ」 「は?ちょ、それまじ勘弁……」 「いーじゃん!みんなつけてる!」 嫌がる壱吾の手を引いてワゴンに近付くと、元気なお姉さんがにこやかに手を振ってくれる。 真剣な顔で耳付きカチューシャを選ぶ私を、壱吾は優しい眼差しで眺めていた。 「壱吾もつければいいのにー」 「……お前、それ本気で言ってんの?」 結局つけたのは私だけで、目的のアトラクションを目指してパーク内を歩く。 見える景色はあの時とさほど変わっていないのに、私達の距離だけはあの時と違う。 こんな風に寄り添い、手を繋いで歩くことが出来るなんて思ってもいなかった。 「お揃い、可愛いのになー」 「可愛いのは、お前一人で充分」 私が喜ぶ言葉をサラっと言ってのけると、目的のアトラクションの前に到着する。 なかなかの待ち時間だけど、それすらも楽しくて仕方ない。
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