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「はぁ~、でも疲れたねー」
お風呂上がり。
バスタオルで髪を拭きながら2人でリビングに戻ると、壱吾がドライヤー片手にベッドに腰を下ろす。
「香音、髪乾かすからこっち来て」
「はーい」
ベッドを背もたれにして壱吾の足の間に座ると、カチ、という音と共に温かい風が髪を揺らす。
壱吾の指が髪を梳くたびに、気持ちいいようなこそばゆいような、何とも言い難い気持ちにさせられた。
「……髪、伸びたな」
「そうだね。壱吾が長いの好きだって言ってたから……」
「え、そんなこと言ったっけ?」
「うそっ、忘れたの!?」
グルっと勢い良く顔を後ろに向ければ「ちょ、髪まだ」と、壱吾の手が私の頭をまた前へ向ける。
私は大人しく前を向くと膝を抱え、壱吾にはわからないように唇を尖らせた。
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