〈過去〉19歳・初夏

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ゴソゴソとテレビボードの下にある引き出しを探ると、何かを手にして戻ってきた壱吾が私の隣に座る。 「はい。これで機嫌直して?」 私の前に差し出されたのは、一枚のレンタルDVD。 そのタイトルを目にした瞬間、バッと隣に座る壱吾を見上げた。 「っ!え、これっ、初めて一緒に観た映画っ!なんで!?」 「初心に戻るって言っただろ?香音と一緒に観ようと思って、借りといた」 憎ったらしいくらいの笑顔を浮かべると、「ど?機嫌直った?」と首を傾げる。 私は今にも頬が緩みそうになるのを必死で我慢しながら、パッと視線を逸らすと小さな声で呟く。 「………直った」 チラ、と壱吾を見れば、片膝を立てた上で器用に頬杖を突きながら、優しい笑みを浮かべていた。 私はふぅ…と小さく息を吐くと、 「……ずるいなぁ」 「言っとくけど、これで終わりじゃないよ?」 そう言って壱吾は私の方へ向き直ると、そっと私の手を取る。
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