〈過去〉19歳・初夏

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****** 「北見ちゃん、今日一緒に帰れる?」 「帰りません。………和田さん、これいつまで続けるつもりですか?」 顔を合わせるたびに繰り広げられる同じ会話に、思わず溜息も零れる。 出会った頃から変わらないこのやり取りに、今や周りのみんなも笑って眺めているだけ。 「そりゃ、一緒に帰れるまで」 「冗談もいい加減にして下さい」 「だーかーら、いつも本気だって」 毎回平行線の会話に、いい加減言い返す気も起こらなくなってくる。 私はさっさとこの場を離れたくて「……お疲れさまでした」とだけ呟くと、事務所へ向かった。
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