〈過去〉19歳・初夏

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「北見さん、内定貰ったの!?」 「はい、無事決まりました~!」 私の元に一通の内定通知が届いたことを報告すると、津坂さんは私以上に喜んでくれる。 「おめでとう!羽村くんにも報告した?」 「いえ、実は壱吾にはまだ内緒にしてるんですよね。今度会う時に驚かせたくて」 へへっ、と悪戯っぽく笑う私に、津坂さんは少し困ったように眉を下げた。 プレッシャーを与えたくないからか、壱吾からは敢えて何も聞いてこない。 だからこそ、本当ならすぐに報告しなきゃいけないのに、悪戯心が邪魔をする。 驚いて、その後嬉しそうに笑う顔が見たい。 ただそれだけのために内緒にするなんて、意地が悪いことは理解している。
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