〈過去〉19歳・初夏

38/78
前へ
/747ページ
次へ
コツコツと足音を響かせながら廊下を進み、備品室の前へ来ると、ポケットから鍵を取り出し鍵穴へ差し込む。 カチ、という音が耳に届くと、ゆっくりとドアを押し開けた。 パチ、と電気を点けてダンボール箱を中に入れ、ズラリと並ぶ数々の備品をぐるりと見渡した後、手袋の棚に目が留まった。 「あ、手袋そろそろ無くなりそうだったし、ついでに持っていこっかな……」 独り言をポツリと零しながら手袋の棚に手を伸ばす私の背に、突然声が掛けられる。 「お疲れ」 「ひゃあ!」 奇声と共に後ろを振り向けば、今日休みのはずの和田さんがドアから顔を覗かせていた。
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2053人が本棚に入れています
本棚に追加