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「なに、その色気のない声。ビビリすぎでしょ」
私服姿の和田さんはドアが閉まらないように背中で押さえながら、身体半分を備品室の中へ滑り込ませる。
「いきなり声を掛けられれば、びっくりするに決まってるじゃないですか!……あー、心臓バクバクする……」
ふう、と軽く深呼吸をしてから再び手袋に手を伸ばし、サイズチェックをしてから必要な分だけを手に取る。
「今日休みでしたよね?」
「あー、うん。忘れ物取りに来たら、電気点いてるし、覗いてみたら北見ちゃん居たから声掛けた」
「お陰でこっちは無駄に驚かされましたよ」
そう言いながら棚に掛けられてある在庫表に記入を済まし、捺印を押すと微妙に左ナナメに曲がってしまった。
まぁいいかと元に戻すと、パチ、と和田さんと目が合う。
じっと見つめられ、なぜか目が逸らせなかった。
「初めてじゃない?」
「……なにがですか?」
手袋の箱を抱えたまま小さく首を傾げると、和田さんが一歩こちらに歩み寄る。
「……2人きりになるの」
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