〈過去〉19歳・初夏

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「………な、にして……」 手袋を持つ手が微かに震える。 いつもと違う和田さんに、とてつもない不安に襲われた。 「……北見ちゃんってさ、本当に彼氏以外には興味ないよね」 ジリ、とまた一歩距離を詰められる。 すぐ後ろは壁。逃げ場はない。 「……それの、なにがいけないんですか?」 「勿体無いな~と思って。彼氏だけが男じゃないんだよ?」 「……意味がわかりません」 背中が壁に触れると、私を逃さないように壁に手を突いて囲む。 キッと睨みつければ、和田さんは緩く口元を釣り上げた。 「他の男を知る、いい機会だと思わない?」 「……思いません!」 無理矢理抜け出そうと和田さんの腕を押し退ければ、簡単に腕を掴まれ、そのまま壁に押し付けられる。 手にしていた手袋の箱は私の手から滑り落ち、音を立て床へと落ちた。
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