〈過去〉19歳・初夏

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「っ、んぅ……や、っだ!!」 「いい加減諦めろよ。一回くらい、黙ってればバレねーだろ」 こうなって初めて知る。 男の人の力がとてつもなく強いこと。 それでいて、いつだって壱吾は優しかったんだということ。 泣きたくないのに、いつの間にか涙は頬を滑り落ちていた。 「いいね、泣き顔。興奮するわ」 プチ、とワイシャツのボタンを外し始める和田さんに向かって必死にもがけば、ちょうど和田さんの足に私の足が当たる。 「ってー……」 片方の眉を下げ、表情が微かに歪んだ瞬間。 私の頬にピリ、とした痛みが走った。 「チッ、…優しくしてやってんだから、大人しくしてろよ」 ひどく冷たい瞳が私を見下ろす。 ジンジンとした痛みが頬に広がり、私は今、叩かれたんだということをやっと自覚した。
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