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「んんっ……」
「あぶね」
外では津坂さんと誰かの話し声が響く。
「北見さん、いないんすか?」
「ん~、電気は点いたままなんだけど……」
「消し忘れて帰っちゃったんじゃないんすか?」
「かもね」
やだ!行かないで!と叫びたいのに、しっかり押さえ付けられた手がそれを阻む。
静かな廊下に足音が響き始め、もう諦めかけた時。
「筒井くん、備品室の鍵持ってきてくれる?」
津坂さんの言葉に視線をドアに向ける。
「電気、消して帰らないと」
「あぁ、そうっすね。わかりました」
息を潜め、聞き耳を立てていた和田さんは小さく息を吐く。
「……いっつも邪魔してくれるよね、あの人。あー、まじウザ」
そう言うと纏め上げていた私の手が解放され、突然自由になった身体は、力なくその場にズルズルと座り込む。
和田さんはそんな私なんてお構いなく、ドアに近付き、カチ、と鍵を開けて出て行った。
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