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鍵がかかっていた筈のドアが開いたことに驚く津坂さんの声が聞こえ、私は乱れたワイシャツを前でギュッと握りしめると、膝を抱えたまま二人の会話に耳を傾けた。
「うわ!……えっ、和田くん!?」
「お疲れさまです」
「えっ、なにどうしたの?」
「忘れ物、取りに来ました」
「あ、そう。…え、でもなんでここから……」
「すみません、津坂さん。突然で申し訳ないですけど、俺、今日でバイト辞めます」
「はっ!?ちょ、どういう」
「店長にも話しておくので。…じゃあ、失礼します」
足音が遠のいた後、キィ…という音がして備品室に人の気配を感じる。
「………北見さん?」
津坂さんに名前を呼ばれ、肩が揺れる。
………こんな姿、見せられない。
「どうした?具合でも悪く、」
そこまで言葉にすると津坂さんの足音がピタ、と止まり、沈黙が流れた。
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