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備品室から出て来た津坂さんに、筒井くんの驚いた声が聞こえる。
「あれ?鍵、開いてたんすか?」
「ごめん、ごめん。俺、間違ってドアノブ押さずに引いてたみたい。せっかく鍵、取りに行ってもらったのにごめんね」
「なんすか、それ。津坂さんでも、そんな間違いするんすね」
「ここ俺やっとくし、鍵も返しとくからさ。筒井くんもう帰っていいよ」
「そうっすか?…じゃあ、お先失礼します」
津坂さんの気遣いが余計に涙腺を緩ませる。
筒井くんと話し終えた津坂さんが戻ってくると、「とりあえず、ここ出よう」と私に向かって手を差し伸べた。
だけど私は、その手を取ることが出来なかった。
「…………あ、ごめん。今は…嫌だよね」
「………ごめん……なさい」
「大丈夫だから。……着替えて、事務所に来れる?」
私はコク、と頷くとヨロヨロと立ち上がり、津坂さんに言われた通り、なんとか着替えを済ませ、事務所へ向かった。
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