〈過去〉19歳・初夏

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「備品室、俺が行けばこんなことには……」 私はその言葉に、フルフルと首を振った。 和田さんが来るなんて、予想もできなかった。 それに完全に油断していた私が悪いんだ。 冗談だと決めつけて、少しも疑うことをしなかった。 「…………津坂さんのせいじゃ……ないですから」 もっと危機感を持っていれば………なんて。 遅すぎる後悔をしても仕方ないのに。 「北見さんは大丈夫だって言ってたけど……俺には和田くんがやたら北見さんに執着してるように思えて……。気を付けてたはずなのに……本当にごめん」 私に頭を下げ、謝る津坂さんに何て言葉を掛ければいいんだろう。 未遂で終わったのも、津坂さんが来てくれたからなのに。 「………私……津坂さんには、感謝してます。……じゃなきゃ、今頃……」 その時。 勢いよく、事務所の扉が開いた。
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