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それから三週間後。
久し振りに壱吾のアパートの前に立ち、インターフォンを鳴らす。
あれから。
適当な言い訳を並べて、壱吾と会うことを避けてきた。
内緒にすると決めたのは私自身なのに、壱吾に会うのが怖い。
いつもと変わらない私でいられる?
壱吾の前でちゃんと笑える?
そんなことばかりが頭の中をぐるぐると回って、身動きが取れずにいた。
逃げたってどうにもならないのに、すぐ怖気づいてしまうのは私の悪い癖。
ーーーピンポーン……とインターフォンが部屋に響いたあと、わりとすぐに玄関の扉が開く。
「…なんでインターフォン鳴らしてんの。いつもみたいに合鍵、使えばいいのに」
「あ、…久し振りだし、何か緊張して……」
壱吾の顔を見た瞬間、ものすごく速いスピードで胸の鼓動が刻まれていくのがわかった。
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