〈過去〉19歳・初夏

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「突っ立ってないで早く入れば。…寒いだろ?」 「あ、うん。……お邪魔します」 廊下を抜け、リビングに足を踏み入れると、暖かい空気が頬に触れる。 たった一ヶ月近く来なかっただけで、こんなにも壱吾の部屋が懐かしい。 マフラーとコートを脱ぎながらぼんやりとそんなことを考えていると、キッチンからカチャカチャと音が聞こえる。 「……なに、してるの?」 キッチンにいる壱吾に問いかければ、こちらを向くことなく答える。 「ん?ご飯作ってるけど……っ、よっ!」 そっと壱吾の背後から覗き込めば「あっち!」と言いながら、フライパンと必死に格闘している。 ひっくり返されたお皿の上には、少し形の崩れたオムライス。 「……これ、壱吾が…?」 「……なんだよ?料理は見た目じゃなくて味だっつったの香音じゃん」 もう一つのお皿も完成させると「ん、」と、私に手渡した。
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