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「突っ立ってないで早く入れば。…寒いだろ?」
「あ、うん。……お邪魔します」
廊下を抜け、リビングに足を踏み入れると、暖かい空気が頬に触れる。
たった一ヶ月近く来なかっただけで、こんなにも壱吾の部屋が懐かしい。
マフラーとコートを脱ぎながらぼんやりとそんなことを考えていると、キッチンからカチャカチャと音が聞こえる。
「……なに、してるの?」
キッチンにいる壱吾に問いかければ、こちらを向くことなく答える。
「ん?ご飯作ってるけど……っ、よっ!」
そっと壱吾の背後から覗き込めば「あっち!」と言いながら、フライパンと必死に格闘している。
ひっくり返されたお皿の上には、少し形の崩れたオムライス。
「……これ、壱吾が…?」
「……なんだよ?料理は見た目じゃなくて味だっつったの香音じゃん」
もう一つのお皿も完成させると「ん、」と、私に手渡した。
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