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「はい。どうぞ」
「ん、サンキュ」
食事と後片付けを終えたあと、ベッドを背に並んで座り、今日の目的でもあるチョコを渡す。
「今、食べていい?」
「うん、いいよ」
シュル…とリボンを解き、不織布のラッピング袋を開けると、木製の小さな籠にひとつひとつキャンディー型に包まれたブラウニーが顔を出す。
「美味そ」
赤色のモールがついたブラウニーをひとつ手に取ると、包みを剥がし、そのままひと口で頬張った。
「………どう?」
「美味い」
どれだけ味見をしても、壱吾の口からその一言が聞けるまではどこか不安が拭えない。
だからその言葉が聞けた瞬間、身体の力が抜けたようにほっとした。
「よかった。……あ、もうこんな時間。じゃあ、私そろそろ帰るね」
腕時計で時間を確認しながらもう片方の手をマフラーに伸ばすと、壱吾の手が私の腕を掴み、それを止める。
「……泊まってかねーの?」
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