〈過去〉19歳・初夏

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「明日、バイト無理すんなよ?」 「……うん。ありがと」 家の前に辿り着いた私達は、お互いに離れるタイミングを探り合うように沈黙する。 「……ほら、早く家入れって」 「………うん。…じゃあ、おやすみなさい」 そっと離された手で壱吾に手を振り、背を向けた私が家の門を開けたとき。 「………なぁ、なんかあった?」 その言葉に、一瞬で全身が固まる。 ピクリとも動けずにいる私は、なんとか絞り出した声で問いかけた。 「………な、んで?」 「必死で隠そうとしてるから黙ってたけど、今日、ずっと元気ないだろ」 大きな音で波打つ胸の音を感じながら、頭の中は壱吾への言い訳を必死で探す。 少し沈黙が続いたあと、私はそっと口を開いた。 「……やっぱり壱吾には、わかっちゃうんだね」 私はグッと手に力を込めてから、穏やかな笑みを浮かべて壱吾の方へ振り向いた。
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