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「ごめんね。…なかなか言い出せなくて」
よくもこんな嘘が次々と出てくるものだ。
ひとつ嘘を吐くたびに、心がジクジクと痛む。
「……まぁいーよ。香音も頑張ってんだし。その代わり、内定もらったらすぐ教えて」
「うん、わかった」
「じゃあ、……はい」
ポケットから両手を出すと、私に向かって腕を広げてみせる。
「……」
「会えない間の充電」
さっきの不安が過ぎるも、ここで拒否したら壱吾におかしく思われてしまう。
私は一歩足を前に踏み出し、吸い込まれるように壱吾の腕に包まれた。
どこか身体に力が入った気がするけど、さっきまでの不安を打ち消すような温かさに涙が出そうになる。
「……頑張れ」
「……うん」
離れる間際、おでこに唇が触れる。
別れを惜しむような、おやすみのキス。
これが壱吾に触れる最後にはなりたくない。
そう思いながら、遠ざかる背中を見送った。
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