〈過去〉19歳・初夏

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それから私は考える。 壱吾には絶対にバレたくない。 だけど、また触れられた時に思い出してしまうかもしれない。 そう何度も誤魔化せるはずがない。 だけど、本当のことは言えない。 触れたいのに、触れてほしいのに怖い。 これ以上、嘘なんて吐きたくない。 そばにいたい。 離れたくない。 ずっと一緒にいるって約束したのに。 ずっと一緒にいられないかもしれない。 毎日毎日、考えることは同じことばかりで。 その度に涙を流しては、最悪の結末ばかりを考える。 それだけは避けたい私は何度も全て話すことを決意するのに、結局は壱吾の声を耳にするだけで怖気づいてしまう。 壱吾だけには嫌われたくない。 なによりもそれを怖がった私は、この先ずっと後悔するであろう選択をした。 そして。 最後の日がやってくる。
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