〈過去〉19歳・初夏

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初めて会った時のことを思い出す。 「………どうも。羽村です」 少し無愛想な印象だった壱吾と仲良くなって、バイト終わりに一緒に帰るのが当たり前になった。 初めて二人で出掛けた時は、普段とは違う壱吾にドキドキして。 緊張もしたけど、すっごく楽しかったことを覚えてる。 名前で呼び合うようになってからは、距離が近づいたような気がして嬉しくて。 でも、些細なことで不安になったり、落ち込んだりもした。 "壱吾の特別な女の子になりたい" その願いが叶った遊園地デート。 今でもはっきり覚えてる。 雨のにおいも、 靴擦れの痛みも、 『好き』の言葉も、 壱吾の照れた横顔も、 繋いだ手の温もりも、 そして…… 「俺と、付き合ってほしい」 壱吾の彼女になった瞬間も。
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