最後の嘘。

3/37
前へ
/747ページ
次へ
突然掴まれた腕に驚き、桐生さんを見下ろすと、彼もまたニッコリと微笑んでいる。 「……桐、生さーー」 そう言葉にする前に、壱吾の低い声が届く。 「先輩、腕、離して下さい」 壱吾の方を向けば、明らかな敵対心を宿した瞳が真っ直ぐに桐生さんを見ている。 まるでそうなることを最初からわかっていたかのように、桐生さんは口の端をつり上げた。 「なんで羽村にそんなこと言われなきゃならないのかな?」 「………いいから、離して下さい」 「そういうこと言われると、余計離したくなくなるな」 二人のただならぬ雰囲気に周りのみんなもザワザワとし始める。 「え、なに。もしかして羽村くんって……」 「え!?うそ!そういうこと!?」 ヒソヒソと聞こえてくる会話の居心地の悪さに耐えられず、私は掴まれた腕を力いっぱい振り払うと、きゅっと桐生さんを見据えた。 「っ、桐生さん!いい加減にーー」 「……香音」 私の言葉を、今度は瑞妃の私の名を呼ぶ声で遮られる。 「羽村さんと、どういう関係なの……?」
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2052人が本棚に入れています
本棚に追加