2052人が本棚に入れています
本棚に追加
突然掴まれた腕に驚き、桐生さんを見下ろすと、彼もまたニッコリと微笑んでいる。
「……桐、生さーー」
そう言葉にする前に、壱吾の低い声が届く。
「先輩、腕、離して下さい」
壱吾の方を向けば、明らかな敵対心を宿した瞳が真っ直ぐに桐生さんを見ている。
まるでそうなることを最初からわかっていたかのように、桐生さんは口の端をつり上げた。
「なんで羽村にそんなこと言われなきゃならないのかな?」
「………いいから、離して下さい」
「そういうこと言われると、余計離したくなくなるな」
二人のただならぬ雰囲気に周りのみんなもザワザワとし始める。
「え、なに。もしかして羽村くんって……」
「え!?うそ!そういうこと!?」
ヒソヒソと聞こえてくる会話の居心地の悪さに耐えられず、私は掴まれた腕を力いっぱい振り払うと、きゅっと桐生さんを見据えた。
「っ、桐生さん!いい加減にーー」
「……香音」
私の言葉を、今度は瑞妃の私の名を呼ぶ声で遮られる。
「羽村さんと、どういう関係なの……?」
最初のコメントを投稿しよう!