最後の嘘。

8/37
前へ
/747ページ
次へ
「………ごめん。香音を責めてるわけじゃねーんだよ。そんなの……言えるわけないってのもわかってる。だからこそ、………なんで気付いてやれなかったのかって、心底自分に腹が立つ」 深い溜息と共に自分を責めるような言葉に、私はやっと口を開く。 「…………気付かなくて、当然だよ……」 やっと出た声は掠れていて、喉もカラカラ。 相変わらず胸はドクドク、と激しく波打っている。 「だって、…………気付かれないように必死で………隠したんだもん……」 震える声でそう口にすれば、鼻の奥がツンとして、じんわりと目元が熱くなる。 「…………壱吾に、嫌われるのが怖くて………どうしても本当のことが………言えなかった」
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2052人が本棚に入れています
本棚に追加