最後の嘘。

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くしゃ、と歪む泣き顔を見て壱吾がふっと笑うと、頬に零れた涙を拭う。 頬を包んでいた手はゆっくりと下に下がり、私の手を優しく包んだ。 「……好きだ」 観覧車で告げられた時と同じ瞳で私を見る。 「一目惚れしたあの時から、ずっと香音しか見てない」 最上級の愛の言葉は、私の吐いた嘘さえも掻き消してくれる。 「香音、」 だから、一瞬夢見てしまった。 「………やり直したい」 また壱吾の隣で笑う自分を。
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